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第二回 研究協議会を開催しました

 2017年8月26日(土)、筑波大学附属久里浜特別支援学校にて第2回研究協議会を開催しました。当日は、特別支援学校教諭、幼稚園教諭、保育士、保護者など、約40名の参加がありました。午前は、知自幼研会員でもある別府哲先生(岐阜大学教授)に、「自閉症幼児の心を支える~保育・教育で大切にしたいこと~」と題して講演をしていただきました。午後は、知自幼研会員によるポスター発表会を行いました。以下、午前、午後の様子を簡単にお伝えします。

<別府哲先生の講演>

 別府先生の講演では、まず、自閉症の人たちの社会性の発達について学びました。社会性とは、「人とやりとりをする能力」のことです。社会性には、「相手との関わりの中で何となく空気を読んで行動する力(「直観的心理化」)」と「~のときは、○○と行動するといったようなルールを理解して行動する力(「命題的心理化」)」という二つのレベルがあるとのことでした。自閉症の人たちの多くは、直観的心理化が苦手であり、命題的心理化は得意のようです。このため、周囲から見ると「空気が読めない」という現象が起こってしまうようです。

 しかし、別府先生によると、自閉症の人たちも「相手に自分のことを分かってもらえる」経験を幼いときから十分に経験することを通して、「相手を分かる」力を発達させていくことができると言います。保育・教育の中では、自閉症の子どもに対し、一方的に「~のときは○○します」と教え込むのではなく、まずは、その子どもの思いや考えを分かることが大切であることを学びました。

 次に、「心を支える」という視点から、子どもが愛着を形成していくプロセスについて学びました。乳児期後半の発達段階になると、子どもは「好き‐嫌い」という対の世界を意識するようになります。この力が「人見知り」という現象を生み、さらに、「心の支えになる人」を形成していきます。

 自閉症の子どもたちは、「心の支えになる人」を形成していくプロセスに特異性があるようです。多くの自閉症の子どもたちにとって人は予測不能な「恐怖の対象」となりがちです。そのため、自分にとって安心できる物との関わりが多くなり、人との関わりが生まれにくいという現象が起こります。こうしたことを踏まえて、保育・教育の中では、自閉症の子どもの好きな物、好きなことに十分に共感し、それらを介して、少しずつ関係性を築いていくことが大切であることを学びました。

 最後に、別府先生は、日々、子どもと関わる上で、「子どものいくつもの顔を見つめてほしい」、「そのためには、大人自身が心にゆとりをもち、実践を進めてほしい」とお話しされ、講演を締めくくられました。

<ポスター発表会>

 ポスター発表は、テーマを「幼児期で大切にしたいことを考える~自分の実践や取組、立場から考える」とし、以下のように、知自幼研会員から8本の発表がありました。

①3歳児学級で大切にしたいこと

  筑波大学附属久里浜特別支援学校

   幼稚部 内田 紀子、飯島 杏那、村上 絵里佳

②4歳児学級で大切にしたいこと ~人や物と関わる力を育てるために~

  筑波大学附属久里浜特別支援学校

   幼稚部 塚田 直也、恒松 美和子、石川 千尋

③5歳児学級で大切にしたいこと

  筑波大学附属久里浜特別支援学校

   幼稚部 井上 千尋、須田 美喜子、稲本 純子

④歯科通院の取り組み

  筑波大学附属久里浜特別支援学校

   幼稚部 恒松 美和子

⑤知的障害を伴う自閉症幼児と教師の関係性構築に関する研究

  筑波大学附属久里浜特別支援学校

   小学部 工藤 久美

⑥近隣幼稚園と特別支援学校幼稚部の併行通園の取組~年長幼児R君の事例を通して~

  筑波大学附属久里浜特別支援学校

   小学部 松館 敬太

⑦「ゴンゴン」だけをみないで ~Aさんから学んだこと~

  千葉県立つくし特別支援学校

   小学部 野本 有紀

⑧「もう、だいじょうぶだよ!」~大好きな物と楽しいイメージでたくさんの不安を乗り越えた、Aちゃんの成長エピソード~

  千葉県立安房特別支援学校

   幼稚部 鈴木 希世佳

 最初に、それぞれの実践や研究内容を聞き、その後、発表者と参加者が意見交換を行いました。また、参加者同士が意見交換する様子も見られ、互いの実践や経験を基に、幼児期に大切にしたいことを語り合う場となりました。

 ポスター発表のまとめとして、別府哲先生、知自幼研会長である前川久男先生からコメントをいただきました。前川先生は、知的障害を伴う自閉症幼児と関わるときに、「問題や障害」という視点からではなく、その子どもの生活が、社会的関係性の中でどのように豊かになっていくのかという視点から考えてほしいとおっしゃっていました。さらに、言葉や思考という一見、個人的な能力とみられるものは、実は、人と人との関係性の中で完成させられるのであり、大人が一方的に教え込むような保育・教育は成立しない、というとても大切なメッセージをいただきました。

 知自幼研では、引き続き、日々の実践を基に、知的障害を伴う自閉症幼児の発達や生活を支えていくためには、何が必要なのか、何を大切にしていけばいいのかを、皆様と追求していきたいと思っています。

 今後とも知自幼研の活動にご理解とご協力をお願い致します。


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